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 去る7月23日にスイスのグレーシャー・エクスプレス、通称「氷河特急」で起きた脱線転覆事故に、ANAセールス、JTBワールドバケーションズ、阪急交通社のパッケージツアーで旅行中の日本人が巻き込まれ、1名が死亡、多数の負傷者が出た。
 事故はサンモリッツ寄りのラクスとフィーシュ間の橋の近くで発生した。氷河特急の後部3両が脱線し、そのうち後ろから2両が転覆した。氷河特急の後尾2両はパノラマ車両で、日本の旅行会社がパッケージで利用する場合が多いという。
 死亡した女性の旅行者は、夫婦でANAセールスの主催ツアーを申し込んで旅行中だった。ANAセールスは浅川社長以下役員が記者会見し、全員で謝罪するとともに、当面、氷河特急を組み込んだツアーの設定は見合わせることを表明した。
 同社主催のパッケージツアーということで、亡くなった方とその遺族、負傷した方とその家族をケアすることは当然としても、24日の段階で、ANAセールスがテレビを通じ、社会に対して頭を下げて詫びる理由は何もない。
 日本的に言うところの「世間を騒がせた」のがその理由としても、謝罪するに当たらない。この場合は、亡くなった方に謹んで哀悼の意を表することと、負傷者の一日も早い回復を祈ることと十分なケアをすることで良いと思う。
 詫びるのは事故を起こした氷河特急を運行するマーターホルン・ゴッタルド鉄道会社である。外電で鉄道会社役員が謝罪している報道があったが、文書を読んでるだけで、これが謝罪かと思う。日本でこの程度の謝罪ならマスコミに袋叩きに遭うだろう。
 それどころか、マーターホルン・ゴッタルド鉄道は、「事故原因は現在究明中だが、今後の運行において乗客の安全は確保できる」とし、事故区間を含めて氷河特急の運行を25日から再開した。
 旅行業界としては、今回の事故後もすぐに氷河特急の運行が再開されたことで、その後のツアーも催行でき、海外旅行全体に与える影響も少なくてすむと考える向きもあるかもしれない。
 しかし、日本の鉄道で脱線・転覆の死亡事故が起きれば、徹底的な安全点検作業が行われる。JR西日本の大惨事を思い返すまでもない。僅か2日ですぐに運行を再開するといのは日本ではありえないだろう。国情の違いなのか、観光優先と言うべきなのか。遺族の心情を察すると、やりきれないものが残る。
 大半の日本人は、多分そうした思いを持つのではないか。旅行会社も消費者目線から、その辺りは対応するに当たって心情をくみとった方が良いと思う。
 消費者やマスコミに迎合することは良くないが、消費者の心情をくみとることは必要と考える。自分が悪くもないのに、すぐに謝るのは社会やマスコミに迎合していることだ。例え、当事者でも、非があるから詫びるのであって、非がないのに詫びてはならない。
 ANAセールスはその後、ツアーの催行を再検討した。これは、遺族、負傷者、その家族の心情や旅行予定者のことを察してと思う。旅行会社の中には、事故区間の代替輸送手段を用意、また、氷河特急を利用するツアーキャンセルの取消料を免除したところもある。
 法的には、ツアーをそのまま催行し、キャンセルする場合は取消料も収受できるだろう。しかし、日本でこのような鉄道事故が起きたら、当該事故区間は当面運行停止となる。それを踏まえれば、旅行会社の上記の対応は、日本人の消費者目線、旅行者目線に則ったもので、迎合には当たらない。
 安全・安心な旅行提供が最大のサービスだが、逆に言えば、万一、アクシデントが起きた時に、きめ細かな対応ができる。それが、パッケージツアーの最大の強みでもある。パッケージツアーで来て良かったと、旅行者が再認識する旅行商品の提供を心掛けたい。(石原)
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by goeurope | 2010-07-27 17:41 | スイス